簡単に言うと、地面の熱が外に出されることで冷えることだよ。
詳しく解説していくね。
こんにちは。気象予報士のともみです。
天気予報を聞いていると、
なんて、気象予報士の方が話していることがありますよね。
そういう時の天気って、よく晴れて、風が弱く穏やかな日ではありませんか?
私が初めてそれを聞いたときは、すごく疑問でした。
晴れて風も弱いのに、なんで冷え込むんだろう・・・?って。
でも放射冷却の仕組みを知ると、なるほど!とすごく合点がいったんです。
今回は、その放射冷却についてわかりやすく説明していきますね。
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放射冷却とは?
放射冷却は、高い温度の物が、その熱を放射、つまり外に出すことで冷える現象です。
たとえば、電子レンジでチンしたときに、お皿が熱くなっていますよね。
でも、放っておくと、このお皿だんだん冷めていきます。
これが放射冷却です。
この放射冷却を天気予報に用いると、
昼間、太陽の日差しで温まった地面の熱が、
夜になると放射されて地面が冷え、さらに地面の近くの空気も冷やされるということになります。
なぜ、このようなことが起こるのでしょうか?
それは、太陽から受ける熱と地球から出る赤外線のバランスが影響しています。
地球は、太陽からの熱を受け取りますが、一方で、地球も赤外線を宇宙へ放出しています。
ところが夜は、太陽からの熱は受け取れません。
すると、以下のようになるのです。
- 【昼間】太陽光線>地球からの赤外線放出
- 【夜間】太陽光線<地球からの赤外線放出
つまり、太陽が出ていない間は、地球から宇宙へどんどん熱が出されている状況なのです。
この放射冷却は、晴れて風が弱い日に強まります。
その理由はなんでしょうか?
放射冷却が強まる条件とその理由
まず、放射冷却が強まる条件は、以下の3つです。
- よく晴れている
- 空気が乾燥している
- 風が弱い
- 盆地
ちょっと意外ですよね。
この理由をお話していきますね。
まず、一つ目、よく晴れていることについての理由です。
条件① 晴れている
もし晴れていなくて雲があれば、下の図のように、
雲がお布団のような役目をして、地球から出ていく熱を遮ることができるからです。
熱が逃げず冷えにくい
雲がある場合は、地面からの熱をいったん雲が吸収します。
そして、その一部を、今度は反対に地面に向かって放射します。
こうして気温が下がることを防ぐことができるのです。
これって、体が冷えないようにお布団をかぶるのと似ていますよね。
では、もし、この雲がなかったらどうなるでしょうか?
晴れていると地面の熱は雲に吸収されることなく、どんどん逃げていきます。
このため晴れた日は冷え込みやすいのです。
熱が逃げて冷える
次に2つ目の強まる条件である「空気が乾燥している」についてです。
条件② 空気が乾燥している
空気が乾燥している状態というのは、空気中に水蒸気が少ないことをいいます。
逆に、空気が湿っているというのは、空気中に水蒸気が多いことをいいます。
そして雲は、水や氷の粒、つまり水蒸気からできています。
とすると、
空気が湿っている=水蒸気が多い=雲と同じ役目
ということになります。
このため空気が乾燥しているときは、雲の役目をする水蒸気が少ないため、放射冷却が強まるということになります。
条件③ 風が弱い
放射冷却が強まる条件、最後は「風が弱い」ことです。
なぜでしょうか?
まず、風の強い日を思い浮かべてみてください。
いろんな砂やほこりが舞い上がりますよね。
それと空気も同じです。
風が強いと、仮に放射冷却で地面近くの空気が冷えていても、それが風によって上空の比較的暖かな空気と混ざり合います。
このため気温はあまり下がらなくなります。
ところが風が弱いと、地面近くの冷たい空気は、上空の暖かい空気と混ざり合うことがありません。
そうして放射冷却が強まるというわけです。
条件④ 盆地である
盆地というのは、周りを山にかこまれている平地をいいます。
周りを山に囲まれていると、空気の循環が起こりづらくなるので、放射冷却で冷たくなった空気は、
そのまま冷たいまま=放射冷却が強まる
ことになります。
また、空気は冷たいほど下にいくという性質があるため、
周囲の山から降りてきた冷たい空気が盆地の中にたまっていくので、より一層、放射冷却が強まります。
放射冷却で霧が発生することも
空気は、気温が高ければ高いほど、多くの水蒸気を含むことができます。
反対に気温が下がると水蒸気を含むことができなくなり、水蒸気は水になります。
つまり放射冷却によって、地面近くの空気が冷やされると、空気中の水蒸気は水になるわけです。
そして霧は、細かい水で出来ているので、地面付近に霧が発生することになります。
これは冷えたコップの周りに水滴がつくのと同じ理由です。
冷えたコップ→地面
水滴→霧
と思うとイメージしやすいかなと思います。
ちなみに、このように放射冷却によってできる霧は、放射霧とか、
晴れたときにできるので晴れ霧とか呼ばれています。
放射冷却は夏より冬に起こりやすい?
実は放射冷却は夏も冬も関係なく、一年中起こっています。
そうなんだ。
じゃあ、なんで冬に天気予報でよく話題になるのかな?
典型的な冬の日本の天気は、
日本海側→雪や雨
太平洋側→晴れて乾燥
という、いわゆる冬型の気圧配置のときです。
冬型の気圧配置についての詳しいお話は下の記事をご覧ください。
このため特に太平洋側の地域では、冬~春先に放射冷却が強まる条件がそろいやすくなります。
冬は夏よりも変化が大きくなり、冬に話題になることが多いのです。