この記事でわかること
春一番って、意外にも意味は「春の嵐」
なんと春のイメージとは真逆・・・。
ここでは春一番が吹くとどうなるのかをお伝えします。
また、なぜ春一番なんて呼ばれるようになったか理由が気になりますよね。
由来は江戸時代のある事故だったんです・・・。
こんにちは。気象予報士のTomomiです。
春先になると、聞こえ出すのが春一番という言葉。
「春」という言葉が入っているので、なんだかポカポカした暖かな陽気をイメージしてしまいそうですよね。
でも、実は、もともとは気象災害の警鐘を鳴らすものとして出来た言葉なんです。
そこで今日は、この春一番について、吹くとどうなるのか?
そして、どんなときに春一番が吹いたと発表されるのか、
意味や定義をお話したいと思います。
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春一番が吹くとどうなる?意味は春の嵐!
実は、春一番は、「春の嵐」とも呼ばれ、恐れられています。
なぜなら春一番が吹くような気象の状況では、
- 火災
- 暴風雪
- 暴風雨
- 雪解けによる洪水
- 山岳遭難
- 海難事故
- 鉄道事故
- 空のダイヤが乱れる
などの災害がこれまで起こってきたからです。
そのため、「春一番が吹いた」と発表があった場合、警戒が必要という意味なのです。
春一番が吹くときというのは、日本海に低気圧があり、その低気圧にむかって、南からの強い風が吹きつけます。
春一番の定義や条件は、以下の記事で詳しく書いてあるので、ご覧ください。
春一番の定義とは?条件が時期や風速なのは関東地方だけじゃない!
ニュースで「春一番が吹きました」って言ってたけど、どんなときに吹くんだろう。くまさん Tomomi 春一番は、ざっくり言うと、 季節が冬から春に変わる時期に最初に吹く、強い南風のことだよ ...
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このため、乾燥した風で火災が起きたり、
突風が吹いて、海や山で遭難事故になったり、
南からの暖かい風で気温が上がることで、雪解けが進み雪崩や落雪になってしまうのです。
そして、その由来となった悲惨な事故がありました。
春一番の由来は海難事故
由来は諸説ありますが有力なものをお伝えします。
時は、江戸時代。
安政6(1859)年の旧暦2月13日、現在の3月17日。
その日、長崎県の五島沖は快晴だったといいます。
ところが、地元の漁師たちが漁に出ると、空模様は急変します。
空が雲に覆われ暗くなると強い強風が吹きつけ、海は大荒れ。
船ごとあおられ転覆し、53名もの命が亡くなったのです。
この悲惨な事故以来、長崎県壱岐市の郷ノ浦町では、
春先に吹く強い南風を「春一番」「春一」と呼ぶようになり、春一番が吹くまでは漁に出ることをおそれたといいます。
また、遭難した旧暦2月13日は、「沖止め」にして、どんなに海が穏やかでも漁に出ないといいます。
そうして春一番は、春を呼ぶ嵐として、
長崎県の壱岐地方から三重県志摩地方、石川県能登地方の漁師のあいだで使われるようになっていきました。
春一番が全国的に知られるきっかけとなったのは、ある本の出版によります。
事件から100年後の1959年。
民俗学の大家、宮本常一が「俳句歳時記」という本で春一番を次のように紹介しました。
「春一番(仲春)【解説】壱岐で春に入り最初に吹く南風をいう。この風の吹き通らぬ間は、漁夫たちは海上を恐れる。(宮本常一)」
それから4年後の1963年には、新聞でも春一番という言葉が取り上げられ、マスコミの間でも使われるようになります。
そして1987年には、郷ノ浦港近くの公園に春一番の塔が立てられました。
ただ、春一番という言葉自体は、海難事故以前にも使われていたようです。
- 1775年 越谷吾山の『物類称呼』に「ハルイチ」が掲載
- 1831年 『池田市史 史料編』に収録された『稲束家日記』で「晴天午ノ刻より雨、春一番東風」との記述