こんにちは。気象予報士のともみです。
ニュースや天気予報で台風の情報を聞いていると、「台風〇号」のあとに、聞きなれない名前を言っていることがありますよね。
実は、台風には1号、2号とかの順番以外にも、いろんな国の言葉で名前が付けられているんです。
国によってこの由来がちがって面白いので、お話しますね。
それでは、さっそく見ていきましょう。
クリックできる目次
2022年の台風の名前一覧と順番
台風は、毎年1月1日以降に最初に発生したのを第1号として、そのご第2号、第3号と続きます。
そして、あらかじめ定められた140個の名前を順番につけていくので、発生前でも名前はわかるので一覧を順番にしています。
*スクロールすると隠れている文字が見えます。
台風の番号 | 名前 | 意味 | 国 |
台風1号 | マラカス | 強い | フィリピン |
台風2号 | メーギー | なまず | 韓国 |
台風3号 | チャバ | ハイビスカス | タイ |
台風4号 | アイレー | 嵐 | 米国 |
台風5号 | ソングダー | 北西ベトナムにある川の名前 | ベトナム |
台風6号 | トローセス | キツツキ | カンボジア |
台風7号 | ムーラン | 花の名前 | 中国 |
台風8号 | メアリー | やまびこ | 北朝鮮 |
台風9号 | マーゴン | 山の名前(馬の鞍) | 香港 |
台風10号 | トカゲ | とかげ座、蜥蜴 | 日本 |
台風11号 | ヒンナムノー | 国立保護区の名前 | ラオス |
台風12号 | ムイファー | 梅の花 | マカオ |
台風13号 | マールボック | 鳥の名前 | マレーシア |
台風14号 | ナンマドル | 有名な遺跡の名前 | ミクロネシア |
台風15号 | タラス | 鋭さ | フィリピン |
台風16号 | ノルー | のろじか(鹿) | 韓国 |
台風17号 | クラー | ばら | たい |
台風18号 | ロウキー | 男性の名前 | 米国 |
台風19号 | ソンカー | さえずる鳥 | ベトナム |
台風20号 | ネサット | 漁師 | カンボジア |
台風21号 | ハイタン | 海棠 | 中国 |
台風22号 | ナルガエ | つばさ | 北朝鮮 |
台風23号 | バンヤン | 木の名前 | 香港 |
台風24号 | ヤマネコ | やまねこ座、山野にすむ猫 | 日本 |
台風25号 | パカー | 淡水魚の名前 | ラオス |
台風26号 | サンヴー | さんご(珊瑚) | マカオ |
台風27号 | マーワー | ばら | マレーシア |
台風28号 | グチョル | うこん | ミクロネシア |
台風29号 | タリム | 鋭い刃先 | フィリピン |
台風30号 | トクスリ | わし(鷲) | 韓国 |
2022年は台風がいくつ発生するか未定ですが、1年に発生する数の平年値は25.6回なので、30号までの名前を順番に記載しています。
それぞれの国の言葉で名前が付けられていたから、聞きなれない名前だったんだね。
でも、どうやって名前を決めたんだろう?
台風の名前の付け方(決め方)
もともと台風には、戦後の占領下の名残りで、アメリカの女性の名前が付けられていました。
ところが2000年(平成12年)から変わります。
台風の影響を受ける日本を含む14か国からなる台風委員会によって、その14か国がそれぞれ10個ずつ提案した名前を使うようになります。
ひとくちメモ
台風委員会とは・・・
北西太平洋または南シナ海で発生する台風防災に関するカンボジア、中国、北朝鮮、香港、日本、ラオス、マカオ、マレーシア、ミクロネシア、フィリンピン、韓国、タイ、アメリカ、ベトナムの政府間組織
14か国×10個なので、全部で140個の決まった名前が台風にはあるわけです。
2000年の台風第1号は、カンボジアで「象」を意味する「ダムレイ」の名前が付けられました。
それ以降、発生順に140個の名前を順番に付けていき、140番目のベトナム「サオラー(意味はベトナムレイヨウ)」が終わると、ふたたび1番目の「ダムレイ」に戻ります。
1年間に発生する台風の数の平均は25.6個ですので、だいたい5年間で140個の名前を一周することになります。
ただ、これには次の2つの例外があります。
台風の名前の付け方の例外
台風の名前で、事前に決められた140個の名前を使わないことがあります。
それは次の2つのケースです。
- 大きな災害をもたらした台風の名前は台風委員会の加盟国の要請でリタイアすることがある
- 台風の領域でない場所で発達した熱帯低気圧が、日付変更線を超えて領域内に移動して台風になった場合
→このときは、もともとの領域を担当すしている気象機関がすでに付けている名前を続けて使います。
たとえば日本が最初に提案していた「ワシ」という名前。
2011年(平成23年)の台風21号でフィリピンに大きな被害をもたらして「ハト」に変更されました。
しかしこのハトも2017年(平成29年)に香港で死傷者を出して「ヤマネコ」に再び変更されました。
ほかにも、
- 日本名の「コップ」が2015年の台風24号で、→「コグマ」へ。
- 香港名の「カイタック」が2017年26号で、→「インニョン」へ。
- 日本名の「テンビン」が2017年27号で、→「コイヌ」へ。
だいたい1年に2~3個ずつ変更になっているようです。
日本名の由来は星座
日本は台風の名前に、星座の名前を提出しています。
これは台風の影響を受けやすい船乗りさんたちに由来します。
大海原では右も左も海で、いったい自分たちがどこに進んでいるかわからないですよね。
今では方位磁針やレーダーなどで、自分の位置を確認することができますが、昔はそんなものはありません。
そんな時、船乗りさんたちは星座を頼りに方角を確認していたんです。
たとえば、北極星は、北の夜空でその位置を変えずに輝くため、北の方角を確認することができます。
この北極星を見つけるには、北斗七星が目印になります。
こうして星座を名前にすることで、船乗りさんが安全に航行できる願いがこめられました。
とはいえ、北斗七星のようなメジャーな星座の名前は、すでにお店や商品などの名前に使われていたりします。
台風の名前に使われてしまうと、もし同じ名前の台風が甚大な災害をもたらしてしまうとショックですよね。
こんな理由から、あまり知られていない星座の名前が提出されたということです。
アメリカ名の由来は女性の名前
もともとアメリカでは、ハリケーンに奥さんや彼女の名前をつけていました。
ハリケーンは、ざっくり言うと台風のアメリカ版と思っていただいて大丈夫です。
(厳密には風速や地域が違います。)
台風 | ハリケーン | |
風速 | 17.2m/s以上 | 32.7m/s以上 |
地域 |
|
|
え!そうなんだ。
なんで、そんな大切な人の名前をつけたんだろう?
始まりは1941年までさかのぼります。
Stormという小説で、著者のGeorge R. Stewartがストームに女性名 のMaria とつけたことで、
空軍や海軍の気象学者が影響を受けて、ハリケーンに奥さんや彼女の名前をつけるようになったそうです。
これはハリケーンの名付け親であるアメリカ国立ハリケーンセンター(NHC)によると以下の理由のようです。
書くにも話すにも、短くて特色のある名前を使う方が、緯度経度で同定する以前の複雑なやり方よりも迅速にコミュニケーションできミスも少なくなることが、経験からわかっている
アメリカ国立ハリケーンセンターとは、
マイアミにあるアメリカ海洋大気圏局ナショナルハリケーンセンターのことで、
こことホノルルにある中部太平洋ハリケーンセンターがハリケーンの名前をつけています。
でも台風やハリケーンって、時に大きな災害をもたらしますよね?
そんなのに自分の名前がついていたら、嫌な気持ちになる女性もいても不思議ではありません。
そこで男女平等にということで、1979年から男性の名前もつけるようになったんです。
そして現在は、台風と同じように、ハリケーンが発生する前からあらかじめ名前が決められています。
台風と違うのは、ハリケーンの場合は、1セット21個の名前リストが6セットで、名付け親はアメリカだけです。
これを1年に1セットずつ使い、6年で1周します。
そして、アメリカでハリケーンに名前をつけていたことが、台風に名前を付ける理由につながっていきます。
台風に名前を付ける理由は?
理由は大きく分けて3つあります。
まず1つ目。
もともとアメリカでは、ハリケーンに名前をつけていたことをお話してきました。
そして第二次世界大戦中、アメリカ軍の気象関係者が台風にも自分の奥さんや彼女の名前をつけるようになります。
戦後、このアメリカの占領下におかれた日本では、1947年から1953年まで、アメリカでつけられた台風の名前をそのまま使いました。
その後は気象庁が台風予報を独自に行うようになりますが、船舶向けには、アメリカの名前を併記していたことや、
東南アジアの国々ではアメリカの情報を使っていたことなどから、
次第に自分たちで名前をつけようという動きにつながっていきます。
これが1つ目の理由です。
そして2つ目の理由。
台風の情報が混乱するのを防ぐためです。
台風というのは、特に夏~秋にかけて、同じ時期に複数の台風が存在していることがあります。
そうすると、どれが第〇号で、どれが第▲号で・・・と混同してしまいますよね。
これに名前がついていたら、混同しづらくなります。
これが2つ目の理由です。
そして最後に3つ目。
単に第〇号とするよりも、コグマとか名前がついていたほうが印象に残りますよね。
そうやって人々の印象に残すことで、より台風への関心を深めて、警戒してもらうことを目的としてつけられました。
これが3つ目の理由です。